
今回は2冊同時に紹介します。前半の1冊は入門、後半は脱入門といった内容の一冊です。
紹介する書籍でもあるランチェスター戦略とはご存知の方も多いとは思いますが、大企業の1千万円プレイヤーでも知らない方がいたので、あえて取り上げます。
私がランチェスター戦略を知ったのは10代の頃、父から教えてもらい、面白そうだったので書籍を読んだのが始まりです。ランチェスター関連書は多数出ているので、探すのには困らないと思いますが、今回紹介する2冊は著者が同じ方で福永雅文さんです。
ランチェスターとはイギリス人の名前です。その方が軍事の理論を構築し、それを経営に取り入れたのがランチェスター戦略と呼ばれ、日本では大いに普及しているようです。
日本には大企業が0.3%しか存在しません。ほとんどの企業が中小かまたは零細です。ですから大半の経営者の方には有用ですし、弱者の戦略の逆を取れば「強者の戦略」となるため、強者にも有益な戦略を知ることができます。また同書では強者と弱者の定義をしっかりと明示しています。
上の写真にある書籍から紹介します。この中には事例が収められており、概要を知るための良著と言えます。
第一法則と第二法則がある
第一法則とはほぼ一騎討ちを意味します。一騎討ちに勝つ要素として、兵士個人の力量と武器の合計値が相手を上回るかどうか?にかかってきます。これを武器性能×兵力数と表します。
第二法則は集団戦と(マシンガン等の)確率兵器や広域戦、遠隔戦を表し、これを武器性能×兵力数の2乗としています。簡単に言えば能力が拮抗している100対100の戦いならほぼ互角の戦いとなるが、一人一人の能力は同水準でも100対10の戦いを10回行うと、少数で挑む方は全滅する。という事です。戦力の逐次投入という事例がこれにあたります。
ではどのように戦えば良いのか。それは弱者は正面から戦いを挑まないという、単純な話です。広域戦ではなく局地戦で挑む。著者は日本の戦国史にも造旨が深いようで、桶狭間の戦いにおける織田軍の戦いを「弱者の戦略」であると評しています。
零細企業では実務に乗せやすい、というより現実に目の当たりにする光景なのでよく理解できると思います。
こちらに紹介する動画もぜひご覧いただきたいのですが、敵が多数でも局地戦に持ち込み、各個撃破すれば地域一番になれると教えています。大手が展開するチェーン店に全国区で戦いを挑むのは無謀ですが、地域性の非常に強い一点に絞り戦えば、チェーン店のその一店舗には勝てる、または負けない。この「負けない」が零細企業には非常に大切になります。
負けずに少しでも黒字を出し続ければ、零細企業や一人社長では勝ったと言えるのではないでしょうか。

こちらも著者は同じです。
上の写真も同じ著者でランチェスター戦略の話ですが、切り口は冒頭紹介の本当は全く違います。私としてはこちらの方がためになりました。
市場占有率の大切さ
74% 上限目標
42% 安定目標
26% 下限目標
19% 上位目標値
11% 影響目標値
7% 存在目標値
3% 拠点目標値
これらが何を示すかは本から学んでいただきたいのですが、この数字を覚え自社の占有率を導き出すことが極めて重要です。市場規模が簡単にわかる業界なら良いのですが、そんなのどうやって算出すれば良いのかわからない。と考える方も多数いらっしゃるでしょう。私もその一人ですが、自社の規模を頼りに敵の数値を探りつつ、公的機関が調査した数値を参考にすれば、自分の立ち位置がなんとなくでも判断できるはずです。市場規模の算出手法も紹介されていました。
イノベーター理論
この理論も有名だと思いますが、かなり面白ので知らない方はぜひ確認してください。上の書籍のP86~105はイノベーター理論とランチェスター理論を掛け合わせた話ですが、自社のターゲットをどこに置くべきなのかが理解できます。そして昔のBMWと近年のマツダが市場の2%に標的を定めた理由も紐解けるはずです。
マツダは未だ2%(イノベーター)を狙う戦略から転換しておらず、それは成功しているように見受けますが、規模が大きくなったBMWはレイトマジョリティーにまでターゲットを広げたせいで不祥事をおこすなど苦しんでいるように思えます。規模が大きくなり転換を迫られ難しい経営なのでしょうか。私には窺い知れない領域です。
このイノベーター理論を知ると正規分布が至るところで活用できるのではないか?との考えが浮かびます。2/8や2/6/2の法則も正規分布の応用の範囲内ではないか。と私は考えます。
零細企業の場合、上位2.5%を顧客にすれば事業として成り立つはずです。私の事業でもここを重視しています。さらにアーリーアダプターと呼ばれる初期採用者までを標的にすれば十分です。これ以上を目指すと事業規模が大きくなり小回りが効かなくなるので、運営から変えてゆかなければなりません。そのためしばらくはこの領域で会社を強くしてから、次の領域へ広げてゆく必要があります。
キャズム理論
このセオリーも目から鱗といった具合で、皆さんに知って欲しいと思いました。リンクからグラフを確認できますが、アーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間には溝があると同理論では結論づけます。

アーリーアダプターからアーリーマジョリティーへ成長し続けるのは難しく、その溝で成長がとまり普及しない場合も多いそうです。そしてこれに続くページで紹介されているのは、市場全体における利益の頂点はレイトマジョリティー領域の中間からやや前方に位置している点が重要です。市場参入が遅れると安価な製品が溢れ、利益を出せなくなります。ですから後発組はよほど状況を読み考えなければ薄利多売に陥ります。
地域戦略
110ページからの、この項目も非常に面白く感じました。
日本を各地域に分け、その地息の中心地へどこから流入するのか。を具体的に解説しています。例えば個人で営む飲食店などは出店地域をどこにするかで悩む場合、全国区で考えたりはしないでしょう。しかし、それなりの数があるチェーン店であるなら当然重要な要素となります。そして多店舗展開する業種を眺め、どの地域にどれだけの出店があるのかを把握すれば、その業界における重要地域が判断できますし、競争の激しい地域を避け地域一番店を目指す事が可能になると思います。
実は私もこの項目を読み、知人に外注して販売店の分布を調べました。予想通りの地域もあれば、意外と感じる地域もあり自分の思い込みを正す良い契機になりました。
ネットに依存することの多い現在、物販等なら拠点はどこでも良いのでしょうか。私もそれを考えています。配送で送られてくる依頼品を作業する割合が多い反面、価格の高い依頼はお客様が直接お越しになるか、こちらが引き取りに行く場合が大半です。ならば地代の安価な地域に移るのは意外に高コストになる場合があります。その見極めを今すすめています。
しかしこの見極め作業自体は、知らなければ発生しない作業です。無知であるなら自分に都合の良い情報だけで判断する。いわゆるバイアスが掛かった状態で無自覚に行動する訳ですから、危険です。
まとめ
今回は2冊の本を紹介したのですが、特に後半の一冊は悩んでいる方にとっては活路を見出す一冊になると思います。ノウハウやハウツーと違い、今すぐこれを実行すれば・・・と言ったような安直な内容ではありませんが、紹介した書籍を手に取り、読み進め、自分の業界にランチェスター戦略を当て活路を見出す切り口になれば嬉しく思います。
紹介した書籍を手に取り、読み進め、自分の業界にランチェスター戦略を当て活路を見出す切り口になれば嬉しく思います。